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Artist statement

風景の先を捉える

鉾井喬チーム  H-1、H-2、H-3、H-4

くらし⇄うみというテーマを考えた時に真っ先に浮かんだイメージは、やさしく差し込む太陽の日差しの下、瀬戸内の静かな海と浮かぶ島々の自然豊かな風景、そしてそこで浮かぶ船たちだった。

昨年からの分校活動を通して私の考える土地でのくらしは、その地の空気を吸い、食べ、抗えない自然と向き合い、循環の一部になっていくことだと感じている。今回の活動のキーワードを自然と対峙するための「道具」として捉えて制作を行った。

 

リサーチ・企画編では、気付きを対話から見出すべく「インタビュー」をリサーチの中心とした。海で道具を扱うスペシャリストである瀬戸内の漁師さん達と、第一展示室の正面に展示されている渡し船の実際の利用者の方に、中高生と一緒にインタビューを行った。特に印象的だったのが漁師さんの「海に感触がある」という言葉だった。季節によって感触が変わるというその言葉は、視覚だけではわからないその先にある深い感覚を想像させるものだった。

「海岸で自然と〇〇する道具」をテーマのもと、インタビューをヒントに中高生がそれぞれ制作をして、れきみん近くの海岸で実験を行った。海の波や光、風、風景といった自然の要素と対峙する作品を発表した。

 

制作編では、この中高生の作品アイディアと鉾井がコラボレーションし、元々あるれきみんの展示空間へのインスタレーションを構想し、メンバーで制作・展示を行った。

当初の予定では別のプランを予定していたが、リサーチ・企画編での中高生のアイディアに触発され、メンバーのアイディアと自分の制作をコラボレーションしていくことにした。香川で生まれ育った中高生のアイディア価値観をベースに、様々な地方で活動する鉾井の価値観が交わり、れきみんという瀬戸内の民族、文化が集積する場所で新たな創造が生まれていることを実感している。

 

 

協力者一覧

谷本和也さん,瀬戸内海の漁師さん達(西谷さん、山道さん、岡田さん、小畑さん、工藤さん),柴田吉郎次さん

鉾井喬配置図

潮風上の光を捉える            H-1

カラーネガフィルムにて撮影・布に熱昇華転写プリント

 

鉾井 喬

清谷 幸花、菅原 幸、湯淺 葵乃、福田 美羽、久本 達也

 

この作品は写真を大きな布にプリントしたインスタレーション作品です。

床に置いてある写真は、瀬戸内海の海中の光を捉えた写真で、潜水艦のように水面下にピンホールカメラを沈めて、潮の流れに漂わせながら、8分19秒間かけて1枚の写真を撮影したものです。8分19秒は太陽で光が生まれて地球に届くまでの時間です。その時間シャッターを開け続け、フィルムに光を蓄え続け、潮の流れの上流の光を捉えた写真です。

また、空間に浮いている写真は、帆を立てて風を受けるようにした小舟に同じようにピンホールカメラを乗せて、瀬戸内海の海を漂わせて8分19秒間かけて1枚の写真を撮影したものです。風と潮の流れの双方の上流の光を捉える試みをしています。

リサーチ編で制作した、海岸の波で動く作品や光の反射や波の揺らぎを捉える作品、風や波で動く作品のアイディアとコラボレーションしました。鉾井が以前から撮影している風上の光を捉える写真「Windgraph」シリーズを発展させ、海の中と海の上の両方の上流の光を捉え、可視化する試みを行いました。

海の感触を想像する           H-2

魯、瀬戸内海の漁師さん達のインタビュー音声

 

鉾井 喬

清谷 幸花、菅原 幸、湯淺 葵乃、福田 美羽、久本 達也

 

ヘッドフォンをつけて、魯を持ち、目を瞑って海の感触を想像してください。

 

リサーチ編では瀬戸内の漁師さんたちにインタビュー形式で、中高生からの質問に答えてもらいました。その中でたくさんの気付きをいただきました。

この先の展示室にもあるフナダマさんのこと、海への向き合い方など。

生物は海から誕生しましたが、人は船に乗ることで海に帰れると思います。この歴史ある船たちを目の前にして、静かに漁師さんたちの声に耳を傾けて目をつむり、魯の先から海の感触を想像してみてください。

 

リサーチ編にて制作した海辺に立ち手持ちの舵を海に入れて海の感触を感じる作品とのコラボレーションです。

砂力発電所(仮)           H-3

砂、ダイナモ、流木、海ゴミのペットボトル

 

鉾井 喬

清谷 幸花、菅原 幸、湯淺 葵乃、福田 美羽、久本 達也

 

電力がなければ人は生きてはいけない現代社会。どうやって電気は生まれているのでしょうか。車輪を回すようにそっと砂をかけてください。

 

まだまだ模索が必要ですが、もしかしたら、ここに展示されている機帆船という自然の風とエンジンの両方を利用している船のように、エネルギーと自然が協働することが必要なのかもしれません。生物が生まれた母なる海を前に、砂浜の砂を通してエネルギーの源を考えてみたいと思います。

 

リサーチ編にて制作した砂浜にて砂をかけて水車のように車を回転させる作品とのコラボレーションです。

Frame of wind

額縁、ベアリング、木材

 

鉾井 喬

清谷 幸花、菅原 幸、湯淺 葵乃、福田 美羽、久本 達也

 

風景という言葉は風の景色と書く。風はどこからやってきて、どこに行くのだろうか。

絶えず変わり続ける、一瞬しか存在しないこの美しい風景を、しっかりと心に留めたい。

 

リサーチ編にて制作した風景を記憶するカメラ作品とのコラボレーション。

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