Artist statement
海のそこ、山のてっぺん、或いは
伊東五津美チーム I-1
遥か2万年前に大地に事件が起こった。
海面が上昇し、陸地だった部分が海に覆われた。
今見ている海も、山も確実にゆっくりと動いている。私たちは少しずつ変化する日常の中で何かを発見することはできるだろうか。
チームメイトと金山遺跡(けいの里)にてリサーチワークを行った。石器として各地に広がったサヌカイトの採石場跡をみたり、通称カンカン石としても知られている石の音を聞いた。金山でしか採れないサヌカイトは縄文時代から様々な場所に伝わっている。石の音をヒントにドローイングをして、目には見えないものを捉えて表現したり、割れた石を観察して縄文時代に生きていた人の痕跡を辿った。けいの里では石がもつゆっくりとした時間軸と人が与えられた時間軸の差異を改めて感じた。リサーチを経て「くらしのカタチをつくろう」をテーマに制作を行った。
ワークショップでは、瀬戸内海歴史民俗資料館の展望台より海を眺める事からスタートした。瀬戸内海の穏やかな風景と、五色台の野生的な森をみる時間。
れきみんの周辺を鳥の声を聞きながら散策し、この建物がどのようにして造られたのか石積みの外観を見ながらその作業工程についてチームのみんなで話した。
開館50年 - その存在感と時間の堆積を感じ、更に50年後のことについて想像をしてみた。れきみんに展示されている資料を見て、今自分が感じていることを粘土を使って形にする。50年後に伝えたいことをイメージして、思い思いに手を動かした。
2日間にわたるワークショップでは次の日に野焼きを行った。
薪を焚べて火を起こし、そこに作品を入れて焼きあげていく。野焼きをすると失敗や成功のほかにも、その過程の中で多くの気づきがある。みんなで火を囲み、お昼にはお芋を焼いて食べた。
人のくらしは、多くの時間の積み重なりがあり支えられている。今回のプロジェクトを通してチームメイトからたくさんのことを学んだ。瀬戸内海という環境の中で《自分の》くらしについて、日常から何を見ているのか、チームメイトのみんなと一緒に考え、それぞれの視点について共有しあえる場所となった。
自分自身と対話をする、それを人に伝えられるような場所を全員で作って行ったプロジェクトとなった。